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【Hot Topics】IT事業者から見える造園業界が直面する問題/課題

  • 執筆者の写真: H.Nakamura
    H.Nakamura
  • 3 日前
  • 読了時間: 9分

更新日:17 分前


urTREE(ユアツリー)の運営元(Coolong Inc)は東京のIT業界で事業を営んでおりますが、コロナ禍でリモートワークが進む中、地方でも何か貢献できることはないかと模索を始めて、会社代表の出身地である愛知県三河地方で若手事業者とサービスをスタートしました。


私たちは、地域の植木屋・庭師(樹木医)と連携して、価値ある庭木を保護(買取・譲受)し、お客様の『庭の終活(庭じまい)』をお手伝いしておりますが、今回のコラムでは、IT事業者から見える造園業界が直面する問題/課題を考えてみたいと思います。



日本の造園業界は、公共インフラの緑化・維持管理と民間の庭園・屋上緑化を担う大切な業種です。

市場はバブル崩壊後に縮小したが近年持ち直しつつあり、造園・園芸・外構を含めた市場規模は約1兆円に達する産業です。


課題も多い業界ですが、チャンスを活かし、イノベーションを実現していく一助になると幸いです。



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◎2025年造園業界が直面する主要テーマ



1. 人材確保・技術継承と2025年問題

・少子高齢化による労働力人口の減少

 2025年には団塊世代の多くが後期高齢者となり、造園業界でも若手技術者が激減。人手不足が深刻化し、技術継承も困難に。


・熟練技術者の高齢化による継承問題

 植木職・造園師では65歳以上が約38%、30歳未満はわずか6%で、伝統的な技能の継承が停滞。


2. 働き方改革・長時間労働の是正

・残業上限規制の適用(2024年4月から)

 建設業法の改正により、残業時間の罰則付き上限規制が導入され、造園業も対応が必須。


・一部企業の“変形労働時間制”導入の動き

 植物の生育サイクルに応じた1年単位のシフト設計など、現場に応じた柔軟な働き方の模索。


3. デジタル化・DX推進と効率化

・紙中心の業務からの脱却

 現場は紙の図面・手作業が中心で、デジタル化の浸透が遅れている状況。


・ロボット・AI・電動機器への投資

 人手不足・熱中症対策として、電動草刈機や自律走行ロボット導入が進む。


・AI活用による設計支援・管理の高度化

 AI技術により、設計プランニングや維持管理の最適化が期待される。


4. 法改正・建設業法の最新動向

労働者の処遇改善義務化

 公正な評価・適正賃金の努力義務が設定され、業界の人材定着施策が後押しされる。


・見積もりにおける労務費・材料費の透明化

 極端に低い見積の禁止、材料費等の内訳記載の努力義務などが義務化。


・都市緑地法等に関する改正の動き

 地方自治体の都市緑化政策強化、生物多様性・グリーンインフラ推進への対応が重要。


5. 社会的要請と都市政策の変化

・まちづくりGX(グリーン・トランスフォーメーション)対応

 気候変動対応・CO₂吸収・暑熱対策・生物多様性確保・Well-being向上を重視する緑地整備が求められる。


・2027 年国際園芸博覧会を見据えた事業機会

 官民ともに展示・施設整備、都市緑化の需要拡大への準備が進む。


6. 業界内リスク・経営課題への備え

・季節・天候変動への対応

 売上の繁閑差や天候リスクへの対応、代替工程や業務の平準化が課題。


・資材調達の安定化

 植物や大型樹木などの品質・価格変動・供給不安への対策が必要。仕入先の分散や長期関係構築が有効。


・競争環境と差別化戦略

 デザイン力・特化技術・ブランド価値で競争優位をつくる必要あり。


7. 人材育成・資格制度の活用

・技術系資格・研修の推進

 街路樹剪定士・植栽診断士など民間資格の普及・研修で技能者の専門性を強化。


・若手育成と女性活躍支援

 日造協などが若手・女性技術者のネットワーク、講座、メンタリングなどを展開している。




まとめ:今、造園事業者がすべきこと

  • 「人」を起点とした 環境整備と働き方改革 を業界内で実践する

  • 技術継承と教育体制 を整え、若手・女性層に魅力ある職場をつくる

  • DX・AI・ロボ・電動機器 の導入で作業効率と安全性を両立

  • 法改正(建設業法・都市緑地関連) に対応し、正しい見積と労働条件を遵守

  • グリーンインフラ・まちづくりGX に則った設計・提案力を強化

  • 季節・資材・競合などのリスク管理体制 と組織的なリスクマネジメントを整備




上記に挙げた7つのテーマから重要度の高い考えるテーマを2つに絞って深掘りしていきます。




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深掘り:人材確保・技術継承と『2025年問題』



「2025年問題」とは?

団塊世代が2025年時点で75歳以上の後期高齢者となることによって、労働力人口が急速に減少する時代の節目を指します 。


総人口に占める後期高齢者が約 1,867万人から 約 2,200万人に増加し、「4人に1人が75歳以上」という超高齢化が現実になってきました。


造園業界の高齢化・若年不足の実態

造園工・植木職の就業者に占める65歳以上は約38%。比較すると、建設・土木作業員では18%程度であり、特に造園業界の高齢化が顕著です 。


30歳未満はわずか6%。若手が極端に少なく、技術継承が困難な現状です 。


総務省/国土交通省の統計では、建設業全体で55歳以上が35.9%(若年層11.7%)。造園もこの構成に類似しており、熟練世代の大量離職によるギャップが危惧されています。


技術継承が困難な構造的要因

熟練技能者の平均年齢は2025年時点で57.8歳。約10年前に比べて5.3歳上昇しており、業界全体で世代交代の緊急性が増しています 。


技能継承に関する明確な計画を持つ企業はわずか38%、技術継承に十分な時間が確保できている企業は27%しかないという調査結果もあります 。


具体的な取り組み・事例紹介


◎日本造園建設業協会(日造協)の取り組み

・若手経営者・女性職人による**「地リーダーズ」ネットワーク**を全国展開し、若手・女性技術者支援や出前講座を実施


・造園CPD(継続専門能力開発)プログラムの啓発や研修会を通じ、剪定・石工・植栽などの技術力を体系的に向上させる取・り組みを推進


◎技術継承・育成の具体戦略

・5〜10年程度の計画的な世代交代プラン:最初に基礎研修、続いて実戦経験と経営関与、最終段階で重要決定への参加まで徐々に権限移譲を行うアプローチが効果的とされています


・映像・動画・VR・音声記録などによる“暗黙知の形式知化”:熟練者の技術や判断を映像




課題・影響と今後の意味合い

課題

内容

高齢化による大量退職

約35〜38%の熟練者が5〜10年以内に引退見込み(造園/建設両方)

若年不足

30歳未満は全体の約6〜12%。入職数も減少傾向

技術継承制度の不足

体系的な継承制度・十分な計画を持つ企業が少数(約3~4割)

教育時間不足

短い研修期間/実戦経験の不足で、暗黙知の継承が進まず

デジタル遅れ

IT活用や記録・共有システムの導入が限定的


これらの構造的課題を放置すると、技術品質の低下や参入障壁の増大、特に日本庭園や伝統工法を要する造園分野で、後継者不在によるサービス供給の断絶リスクすら出てきます。



まとめ:具体的な対策と次のステップ

  • 技術継承のための5〜10年スパンの計画的な人材育成フローを設計する

  • 熟練職人の暗黙知を形式知化する記録システム(動画・音声・VRなど)を整備

  • 日造協など業界団体の研修・CPDプログラムに積極参加し、若手・女性参画の土台づくり

  • 働き方改革や制度認証(ユースエール、くるみん、えるぼしなど)を通じた職場環境改善

  • 大学・専門校との連携やデザインコンクール活用による若手発掘・育成ルートの強化



上記のように、造園業界の「人材確保・技術継承に関する課題」は、統計に裏付けされた現実であり、放置すると業界の持続性を揺るがします。どのように手を打ち、自社としてどのフェーズから体制を整えるかが、今後の競争力とブランド価値に直結します。




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深掘り:「デジタル化・DX推進と効率化」重視の背景と課題


2025年の日本における造園業界でも、デジタル化(DX)は単なる技術導入ではなく、業務改革・経営力向上をめざす必須の潮流です。労働力不足や気候変動対応を見据えた業界構造の転換点といえます。


造園事業者は、事業者の多くは従業員20人未満の小規模企業であり、家族経営やフリーランスも多く、DX化の推進にはより課題が多いと言えます。


デジタル化の現状データ(建設業全体)

  • 64.2%の建設産業従事者がデジタル化に「着手した」と回答し、うち31%が「効果を実感」していると報告

  • 「業務プロセス・組織・ビジネスモデルの変化まで実感している」のはわずか10.7%にとどまる

  • 専門工事会社では、BIM/CIMの活用率はわずか2%と、特に中小企業での活用は極めて限定的

  • 建設業界全体でDX対応は進みつつある一方、造園業界に属する中小企業レベルでは「着手すら」「導入できていない」という実態が多く、環境整備と支援体制の整備が急務


造園業におけるDX活用の範囲と効果


【造園業界の主なDX適用領域】

  • 日報・勤怠のモバイル化・クラウド化

  • ドローンによる3D現場撮影・測量

  • BIM/CIMによる施工シミュレーションと工程管理

  • IoTセンサーや画像解析を用いた植物の健康モニタリング(例:AI診断システム「Plant Doctor」)


【効果例】

  • レーザースキャニングで従来比80%の作業時間短縮を実現した設計・測量事例あり(複雑地形現場など)

  • AI画像解析で都市緑への害虫・病気を定量診断し、早期防除を支援するシステムが東京内で検証中



デジタル化推進のメリット

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効果・具体的内容

効率化・生産性向上

測量・設計・工程共有がデジタル化により作業時間短縮、人手コスト低減

安全性・品質強化

ドローン・IoTセンシングによる遠隔管理や異常検知が可能に

技術継承促進

BIMや映像記録を活用した技術の“見える化”でベテラン知見の形式知化が進む


導入に伴う課題と懸念点

  • 導入率が低い:

    専門工事レベル(中小)ではBIM活用が2%にとどまるなど、まだ十分に普及進んでいません

  • 理解・啓発率の低さ:

    建設業全体で「DXを理解・実践している」企業は11.4%と、DXリテラシーの低さが明らかです

  • 初期導入コスト・運用負担:

    IT投資や研修、既存業務との連携調整などにコストと時間がかかる構造上のハードル



  • まとめ:造園事業者が進めるべきアクション

  • まずは「モバイル日報・勤怠管理ツール」など低コスト導入レベルから実践し、内部に成功体験を育てる

  • 測量・設計にはドローン+3Dスキャン導入を段階的に進め、「80%短縮」など成果事例をつくる

  • 技術継承用の映像・BIMデータベース整備でベテランの知識を後継者に見える形で引き継ぐ

  • 業界団体(日造協、自治体支援)や補助金制度を活用して、段階的なDX投資を後押し

  • DX推進を、働き方改革やBCP対策、グリーンインフラ構築など経営戦略と一体化させる



造園業界においてDXは単なる効率化の手段ではなく、「人材不足」「技術継承」「環境対応」「品質安定」のすべてに直結する重要な武器です。まずは小さな一歩から実績を積み、徐々に業務変革と経営革新につなげていく道筋が、今後の持続成長の鍵となります。




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